台湾の「IT大臣」として人気のオードリー・タンさんの言葉をまとめた本になります。
著者はアイリス・チュウという方で、著者がオードリー・タンさんにインタビューした内容を、連続した短いトピックにまとめてあります。
わたしはオードリー・タン関連の書籍だと『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』を読んでいました。
でも、その本はちょっとむずかしかったですね(笑)
しかし『何もない空間が価値を生む』は、一問一答に似た形式で編集されているので、とっても読みやすい。
わたしもすべて読んだわけではありませんが、オードリー・タンさんに興味があるなら、いちばん手に取りやすい本ではないでしょうか。
本書は、例えば
「ネットをあまり使わないじぶんには、さいきんの若者の考え方がわからない」
とか
「ネットを使う世代だけど、たのしく使えていない」
なんて人が読むと、ちょっとヒントがあるかもしれません。
AI時代の哲学
この本を読んで感じたのは、オードリー・タンさんの根底にあるにはピュアな「ハッカー思想」だということ。
かつて「Web2.0」なんて言葉が流行った時代があったんですね。
「集合知」とか「フリーミアム」などが人類を進歩させるとピュアに信じられていた時代。
ところが現在では、みんなで知識を出し合って賢くなるどころかみんなで二元論に興じて分断が深まるわ、無料の経済が広がるかと思いきや、無料だけを貪る人が出てくるわでてんやわんや。
インターネットに希望を見出すのが、なんだかむずかしいここ最近。
しかしわたしから見ると、オードリー・タンさんはその死にかけた「Web2.0」を地で行っているように見えました。
なぜ彼女がその理想を現実に帰すことができるのかというと、それはまさに「IT時代の哲学」が伴っているからだと思います。
ITだとかインターネットと呼ばれるテクノロジーの上では、人はどのような態度、言動、行動が適切なのか?
それを判断するのが「哲学」だったり、あるいは「倫理」ですよね。
年齢や性別、国籍がフラットになるネットの世界。
かんたんに言えば「多様性」や「寛容」が大事なのですが、本書ではそのようなことが軽快に語られています。
「インターネット的」の先へ
かつて、ほぼ日を運営する糸井重里さんは、
インターネットが車だとすると、「インターネット的」とはモータリゼーションだ
と説明しました。(『インターネット的』より)
車(テクノロジー)によって、人々の生活が変わった。
生活が変わったことによって、人々に意識が変わった。
多くのモノが運べるようになったら、全国津々浦々でモノが潤沢に行き渡り、手に入れやすくなった。
人もどこへでも短時間で移動できるようになったから、家族でも離れて暮らす選択をとる人が増えた。
そのようなことがモータリゼーションですよね。
同じようにインターネットの登場でも、やっぱり人々の意識は変わりました。
特にコロナ禍を経て「オンライン」が加速度的に定着する近年、どんどんと変わってきているように思います。
糸井さんのいう「インターネット的」と、オードリータンさんが語る「IT時代の哲学」は、かなり類似点が多いです。
この地球の国や地域には、それぞれ独特の「哲学」や「倫理」、「作法」や「マナー」が存在していますよね。
世界をつらぬく「インターネット」という広大な国にも、そのようなことが必要になってきます。
むしろ哲学がなけらば、無秩序で危険なインターネットになってしまうのではないでしょうか?
だから学ばないといけない。
いや、学ぶと言うよりも、「IT時代の哲学」は、実はわたしたちみんなが育んでいかないといけないものなのかもしれません。
否応なくみんながこの「インターネット国」の住民として生きているわけですから、それはそれなりに当事者として責任があるでしょう。
そう考えると、本書はある種の教科書として多くの人に読んで欲しい1冊かもしれません。
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