さしずめ「マンガでわかる!コーヒー」のような作品です。
主人公は飲料メーカーの若手社員、花山。
花山は”マズい”コーヒーが飲めないコーヒーオタク。
人見知りで消極的な性格から会社ではお荷物社員的な存在でしたが、信頼する上司とめぐり逢い、コーヒーのプロジェクトに参加する中で成長していきます。
メインはそんなサラリーマンの成長サクセスストーリーですが、全編に渡って登場するコーヒーの知識はきわめて本格的。
それもそのはず「コーヒーハンター」の異名をとる川島良彰さんが監修を手掛けています。
僕はコーヒーがのめない
サードウェーブ真っ只中、2014年ごろの作品
『ぼくはコーヒーが飲めない』は2014年から2017年までビッグコミックスピリッツで連載されていました。
日本では2015年にブルーボトルコーヒーが清澄白河に出店したあたりから、本格的に「サードウェーブムーブメント」が叫ばれましたよね。
サードウェーブムーブメントはコーヒー豆のトレーサビリティーが重要視されました。
トレーサビリティーとは、品種はもとより、生産農園や精製方法、焙煎までをしっかり消費者に明らかにすることです。
よりフェアに、より美味しいコーヒーが全世界で飲めるようになることを目指したムーブメントだったんですね。
これはなんだか現在のSDGsにも通づるものがあります。
コーヒーの輸出入取引額は石油についで第2位とも言われるそう。
それだけ大きなビジネスであるコーヒーの世界は、SDGsが叫ばれるずっと前より、業界の健全化にとりくんでいたというわけです。
『僕はコーヒーがのめない』も、まさにサードウェーブムーブメントを中心に進んでいく話です。
ですから、農園を直接尋ねる話が大きな割合を占めます。
コーヒーの味を決めるのは7割が豆の品質とも言われ、やっぱり農園としっかりタッグを組んでコーヒー豆をつくるのは大切なんだと、このマンガを読むと伝わってきます。
コーヒー農家やバリスタ、焙煎士など、花形コーヒーマンたちも多く登場しますが、主人公は飲料メーカーのサラリーマン。
消費者に近い位置から主人公がコーヒーの知識を学んでいくので、とっても読みやすいです。
一方、「上手なハンドドリップの方法」など、コーヒー専門書でページが割かれる技術的な部分はあまり詳しく紹介されません。
より語られるのは、コーヒーのビジネス的な部分、文化的な部分です。
わたしはいろんなコーヒー屋さんに行くのが趣味なのですが、ここ1、2年で感じるのは「もう不味いコーヒーなんてないな」ということ。
いや、あるにはあるんですよ(笑)
激安で販売しているコーヒーチェーンや、家庭用コーヒーメーカーで淹れている趣味程度のカフェなんかと、やっぱり味は劣ります。
ただ「コーヒースタンド」とか「専門店」を自称するお店で、美味しくないと感じることは本当になくなりました。
今やコンビニでドリップコーヒーが飲める時代に、専門店は当たり前にそれ以上のクオリティが求められます。
無論、専門店の中での競争も激しい。
サードウェーブムーブメントを経て、2020年以降の日本のコーヒーは、ほんとに美味しくなったのではないかと思います。
そんな今の礎になった時代を知るための、ひとつの参考資料がこのマンガ。
サードウェーブムーブメントはこれからも折を見て振り返られる事柄でしょう。
コーヒー好きなら知っておいて損はありません。
ぜひ読んでみてください。
僕はコーヒーがのめない
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