いや〜、何年かぶりにマンガみて泣きました…。
このマンガ『ひらやすみ』は真造圭伍さんの作品。
身寄りのないおばあちゃんから平屋を譲り受けることになった主人公の生田ヒロト。
そこに美大生として進学してくる従兄弟の小林なつみがいっしょに住むことになります。
そんなふたりの日常を綴ったストーリー。
ふたりの出身は山形ということで、わたしは同郷です。
さらに上京当時は同じように兄弟といっしょに住んでいたので、すごく親近感がわいてしまいました。
思わずホロリときてしまったのは6日目(第6話)の「白いアジサイ」というお話。
これはヒロトとおばあちゃんの過去を回想するお話になっています。
ネタバレにならないように言うのがむずかしいんですけど、おばあちゃんがちょっとトラブルに出くわすんです。
そこで優しさを見せるヒロト。
っと、そこまではふつうというか、よく期待されるストーリーだと思うんですね。
でもヒロトの優しさを受けておばあちゃんが言ったセリフが、さらに優しさに満ちていました。
ヒロトから優しくされた時、おばあちゃんにどんなセリフを言わせるか?
作家気分で考えてみると、ふつうは「ありがとう」が正解ですよね。
でもある意味でありきたりなセリフです。
マンガのなかで実際におばあちゃんがいったセリフは、それよりもさらに深みのあるセリフに感じました。
「強がり」にもとれるし、心からの「優しさ」にも見える。
ヒロトも少し戸惑っているように描かれています。
ヒロトの優しさの上に、おばあちゃんの優しさがさらに覆いかぶさってきて、なんとも言えない空間がそこに生まれている…。
その場面でわたしも思わず泣いてしまいました。
結果的にそのことがヒロトに平屋を譲りたいと思ったきっかけになった非常に重要なエピソードになっています。
主人公のヒロトは29歳の男性なんですけど、老若男女いろんな立場のキャラクターが出てきます。(これからも出てきそう)
きっとどの世代の人が読んでも、誰かしらに共感できるのではないでしょうか。
わたしは「日常系」のマンガは好きで、よく読みます。
特に惹かれるのは「悲しすぎず、嬉しすぎない」ストーリーです。
例えばマンガなんだから「恋」だったり、「死」だったりを劇的に描くことはできますよね。
しかしわたしたちの現実世界でそれらに出くわした時、かえって大切なのは日常をふつうに営むことだったりしませんか。
悲しさに陶酔せず、嬉しさに舞い上がらず…ふつうというのは、あんがい強いものです。
その意味で『ひらやすみ』も良いなぁと思いました。
もちろん「劇的なこと」はいくつか起こるんですけど、特にヒロトの柔和なたいどが素敵です。
良い・悪い、敵・味方をあんいに判定せず、ただ受け止めるだけ。
ヒロトはそんな人に見えます。
わたしもそうありたいなぁと思うのです。
久々に水の合う作品と出会えて嬉しくなりました。
まだ1巻が発売されたばかりですし、読み始めるには良いタイミング。
おすすめです!
ひらやすみ