小屋暮らしのバイブル『自作の小屋で暮らそう』。
この本が発刊されてから、本に書いてある内容を参考にして実際に「自作の小屋で暮らす人」が現れました。
YouTubeで検索するとたくさん出てきますよね。
なぜ小屋暮らしに惹かれるのか…。
ローコスト生活を確立することでセミリタイヤを実現できるから。
煩わしい人間関係とサヨナラできるから。
いろいろな理由があるでしょうが、間違いなく一部の人にとって胸に刺さって抜けない本だと思います。
実際、わたしも大きな影響を受けたひとり。
わたし自身は小屋暮らしをしているわけではありませんが、ゼロから生活を手作りしていくその様子を知ることで、本当の意味で「最低限」を知ることができました。
それは人生に大いに役立っているように思います。
小屋暮らし⇒Bライフ⇒最低限の暮らし
本書の副題となっているのが「Bライフの愉しみ」です。
BライフのBはベーシックのB。
つまり最低限を意味します。 描かれている生活は、スペース、エネルギー、お金…すべてが最低限。
最低限とは一般的には、貧しくツラいもので、ありていに言えば「底辺」とかもしれません。
しかしそれは逆に「これさえあれば生きていける」というラインでもあります。
安心して眠るために必要なスペース。
摂らなければいけない食事の内容と量。
電気は?ガスは?水道は?
当たり前にあふれているそれらすべてを自分の頭で考え、体を使って実践していくその様は、都会ではしばらく見ていない「たくましさ」を感じられます。
まずこの本は著者の「好きな時に好きなだけ寝転がっていたい」という何ともシンプルな欲望からスタート。
そこでまずは土地を買うことから始めます。
と、土地!?
まさかそんなガチとは思いませんでした。
せいぜい知り合いのキャンプ場を間借りするとか、その程度かとおもって読み始めたら、まさかの地主デビュー。
多くの人にとって、いくら「小屋を建てる」といっても、わざわざ面倒なことをしても土地を購入することなど考えもしないと思います。
筆者は家賃やローンを支払っていては、どう頑張っても、未来永劫働き続けなければならず、おちおち寝てもいられないという結論に至ったそう。
「好きなだけ寝ていたい!」と言われると、ニートだとか引きこもりを想像した人も多いかもしれません。
たしかに動機だけみるとそうですが、その実やっていることは実に行動的。
土地が手に入ったなら続いて小屋の建設です。
材料は全てホームセンターで調達できます。 難しい技術も必要なく、ツーバイフォー工法を用いて建てたそうです。
5畳程度のワンルームにロフト付き。
その小屋をベースに排水、電気、冷蔵庫などをすべてを手作りしていきます。
ポイントとなるのが全て合法であること。
例えば、排水などはけっこう厳密な法律があるんですね。
自分の土地だし、たったひとりで暮らしているのだから、もしかしたら多少法律に対してユルくても誰にも迷惑をかけないのかもしれません。
しかし、著者はできる限り厳密に合法的であろうとします。
結果的にそのことが本書の再現性の高くし、後に続くBライファーを生み出したのかもしれません。
土地、小屋、ライフラインなどハードの部分がそろってきたら、食事や睡眠についての考察も繰り広げられます。
著者の食事は実にシンプルで、お金も極力必要ないようなメニューですね。
「コーラと対等な立場に立つ」という態度はおもしろかったです。
睡眠に対しては、逆にめちゃくちゃ貪欲。
良い眠りをとるためのさまざまな方法論よりも、何より「自由な睡眠」が最強だと説きます。
時間を忘れて死んだように眠る…それこそがBライフの醍醐味とも言えるかもしれません。
ただわたしも無職期間(離職期間)に好きな時に好きなだけ寝る「自由な睡眠」を実践したことがあったのですが、あまり向いていませんでした(笑)
微妙に体調が悪くなりましたね。
この世界に朝と夜がある限り、やっぱり夜の間に寝るのが人間という生き物として合理的な気がします。
このように著者は、ひとつひとつを自分の手で作っていきます。
本書の文体は決して明るいものではなく、いたってマジメですが、わたしは読んでいてとてもワクワクするんです。
ひるがえって自分の生活を考えると、最低限以上の無駄ものがあるように思えてきました。
超ローコスト生活をしたいわけじゃないけど、誰でも無駄遣いはしたくないですよね? ですから、少なくとも頭の中だけでも最低限からスタートして、無駄遣いのない生活を作っていきたい。
小屋暮らしというと、もっぱら男性の趣味という感じがします。
『自作の小屋で暮らそう』の著者も男性です。
ですが、こと生活という点に着目すると、女性が読んでもこの本はおもしろいと思います。
「ミニマリスト」とか「丁寧な暮らし」なども、やっぱり自分の頭と体をつかって考えることがその思想の根幹にありますよね?
少し強引に思えますが、本書をその文脈で読むことも可能でしょう。
Bライフは社会を捨てた世捨て人の暮らし?
本書でも指摘されていますが、Bライフそのものは高度な社会に強く依存しているからこそ実現可能です。
例えば、小屋の資材ひとつとっても、誰しもが木を切り倒して、製材する技術をもっているわけではありません。
社会の循環の中でそれぞれが役割を果たしていくれているからこそ、一般人が安価にホームセンターで購入することが可能です。
しかしBライフの最低限を考え、実践するというその思考と態度は時代を超えて普遍的な教養となり得るでしょう。
社会がもっと高度になっても、また逆に衰退したとしても、Bライフに立ち返ることで、人間が生きる最低限を自分の力で確保できるようになります。
それ以上に力強い生活力はないようにわたしは思います。
例えば、引っ越しを考える時なんかわたしはこの本を読み返しちゃうんですね。
引っ越しとなるとついつい気が大きくなって、身の丈以上の生活レベルを選びがちじゃないですか。
そこで、対処療法としてBライフをまた疑似体験。
「足るを知る」といった視点を取り戻してから、改めて考えると「あ、こんな豪華な部屋じゃなくて良いじゃん」と思いなおすこともあるんですね。
社会は常にわたしたちにお金を使わせようと企んでいます。(まぁ、企んでいるのも自分なんですが) ついついお金を使う⇒やりたくもない仕事をする⇒ついついお金を使う…。
わたしにとって『自作の小屋で暮らそう』は、その負のループにくさびを入れるためのものです。
間違いなくわたしにとって愛読書のひとつ。
小屋暮らしに興味のない女性の方でもぜひ読んでみて下さい。
『自作の小屋で暮らそう』を含む、その他のおすすめ本はこちら↓
きっと気に入ると思うので、ぜひ読んでみて下さい。
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