アフロ記者でおなじみで、現在は文筆家として活躍中の稲垣えみ子さんの新刊を読みました!
何冊かある稲垣さんの著書の多くは「挑戦記」です。
電気の断捨離に挑戦した記録。
退社に挑戦した記録。
はては一人飲みに挑戦した記録まで。
今回は「ピアノ」です。
幼少期にいちどは挫折したピアノに50歳をすぎてから再度挑戦した記録。
どうしよもない「老い」と戦いながら、ピアノに向き合う姿が綴られています。
これぞ、努力!
指が動かない、老眼で譜面が読めない、すぐ体が痛くなる…。
稲垣さんの身には次々に困難が降り注いでいきます。
その都度ガックリ落ち込みながらも、エッチラホッチラ試行錯誤を繰り返す。
その姿は、まさに努力じゃありませんか。
実はわたしも20代をバンドを捧げたクチでして、楽器習得の難しさは身にしみてわかっております。
でも恥ずかしながらその練習の中でわたしは「ほんとうの努力」を知った気がする。
だから稲垣さんの奮闘を読んでいても「そうそう!それそれ!そんな感じ!」と、あの時の努力の感触がありありと蘇ってきます。
後悔するのは、その努力の感触をもっと早くに掴んでおけば…!ということです。
稲垣さんも本書の中で散々書いていますが、歳をとればその成長は牛歩の歩み。
なんせ体がついていかない。
一難去ってまた一難、一歩進んで二歩下がる、七転び八起き…どうしたって困難がつきまといます。
ところが若い時は若い時で、忍耐強く努力することができなかったりする。
その意味で、本書は稲垣さんと同世代向けの本でありながらも、ぜひ若い人にも読んでほしいと思いました。
実際のところ、若いときだって自分の想像よりずっとずっと成長が遅いですよね。
その成長の遅さに絶望し、投げ出したくなるのは老いも若きもみんないっしょ。
しかし努力の先にちゃんとご褒美があることをいちど知ってしまうと、これがけっこう「努力体質」へと自分が変わっていきます。
なるべくはやく努力体質になるにこしたことはない。
だから若い人にも読んでほしいと思いました。
題材がピアノだけに、もっかピアノ教室に通っている親子でいっしょに読んだら良さそう。
若い人が本を一冊読むのはそれこど努力かもしれませんが、そこはさすがの稲垣さん。
とにかくとっても読みやすい、軽快な文章です。
まるで目の前に落語家「稲垣亭 えみ子」が座って一席設けてくれるような…。
チャキチャキの江戸っ子のような文章です。
きっと本を読み慣れていな人も、それほど苦労せずに読めるのではないでしょうか。
むしろ想像力豊かな若い人なら、稲垣さんが描写する風景がモクモクと湧き上がってきて楽しく読めそう。
興味ある方はぜひ、読んでみてください!