大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者である古賀史健さんがインタビュアーとなり、糸井重里さんの半生をまとめた本になります。
言葉の名人ふたりが作った本ということで、めちゃくちゃに読みやすい本です。
2時間ぐらいで読めてしまいました。
糸井さんの幼少期の話から、ほぼ日上場まで。
いくつかある糸井さんの本とこの本が違うのは、糸井さんの人間らしいいちめんが垣間見えるところです。
幼少期に親たちの会話を盗み聞きしてしまった時に受けたショック。
学生運動からの離脱。
糸井さんも誰にでも平等にある幼さと若さの中で、それはそれなりに傷ついたり、考えたりしてたんだなぁと思います。
糸井重里さんというと、どうも「ゆるふわの天才」みたいなイメージがありませんか。
まぁ、この本を読んでみても「天才やん…」と思う部分は多々ありましたが(笑)
けれど同じくらい人間らしさも現れていて、親近感を感じました。
それはきっと信頼できるインタビュアーとじっくり話すことで、にじみ出てくるものなんだと思います。
もうひとつおもしろかったは、糸井さんが尊敬するコピーライターの先輩方を語っている部分。
コピーライティングの価値ってなんだかわかりにくいですよね。
わたしも文筆を生業にしているにも関わらず、よくわかっていませんでした(笑)
尊敬する土屋耕一さんについて、
土屋さんの書くコピーによって、世のなかにあたらしい価値がひとつずつ増えていく。世のなかが、それだけ豊かになっていく。さらに人々が、自由になっていく。それはほとんど魔法使いのような仕事ですよね。あこがれるし、やってみたいにきまっていますよ。自分のコピーによって、何かを変えていけるんですから。
と語っています。
なるほど。
コピーライティングってただ商品を売り込むだけのセールスライティングだと思っていました。
けれど「世のなかに視点を増やす」と考えて時、それはエッセイとか詩や小説に近づいていきます。
糸井さんからは、しばしばコピーライターという仕事の誇りを感じます。
きっとこのような意味でコピーライティングを捉えているから、自分の仕事に自尊心を持てるんですよね。
広告だとかコピーだとか、ある意味でお金の世界のどまんなか。
そこでクリエイティブを楽しみ、創作に誇りを持つことは容易ではないと想像します。
もし世界が「大衆」と「芸術」の世界に二分されているとしたら、わたしはその真ん中に立って、引っ張り合いたい。
糸井重里さんはコピーの世界でもそうですし、ほぼ日でもクリエイティブを重視しながら、ビジネスにすることを諦めませんでした。
だからわたしは糸井さんは「引っ張り合い」の大先輩に思えます。
ここ最近、特に惹かれるのはそんな理由がある気がします。
これまで糸井さんに関する本は何冊か読んできました。
名著『インターネット的』や『すいません、ほぼ日の経営』、そして『ほぼ日刊イトイ新聞の本』など。
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糸井さんの言うことってフワフワしていて、なにか合点のいかないところがあるじゃないですか(笑)
現代のビジネス本とかSNSに蔓延する「スパッと言い切る感じ」とは真逆というか。
だから読み込んで、咀嚼して、理解するまでは時間がかかる。
わたしは何冊か読んで、やっとわかってきたような気がしています。
『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』はとりわけ気軽に読める本です。
糸井重里さんに興味がある人はここから読み始めるのも良さそうですよ。
その他の糸井さんの本も紹介しています。
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