ネガティブ・ケイパビリティとは、「答えの出ない事態に耐える力」のこと。
著者の帚木蓬生さんは、現代にはネガティブ・ケイパビリティが足りていないゆえに起こる問題が多いのではないか?と考えています。
わたしはこの本を読んで、とても励まされる思いがしました。
ネガティブ・ケイパビリティというひとつのキーワードで話が進みながら、その内容は多岐にわたっています。
芸術、政治、そして医療と、とても教養に富んだ内容。
ぜひ多くの人に読んでほしい一冊でした。
ネガティブ・ケイパビリティとは?
「ツイッターでフォロワーを増やす方法」を知っていますか?
「箇条書きを使う」「画像をとりいれる」などいろいろメソッドがありますが、そのひとつに「言い切る」というのがあります。
しっかりと言い切る、断定することで、その意見はフォロワーを巻き込んでいく強さをおびていくというわけです。
近年はSNSでフォロワーを増やす意味が増大しました。
企業は言わずもがな、個人でもオンラインサロンや投げ銭などマネタイズ環境が整うにつれて、フォロワー増やしのモチベーションは高まり続けています。
結果、ツイッターは「言い切る言葉」であふれるようになりました。
そしてわたしはそれに辟易しています。
人生とは、人とは、140字で言い切れるほど、そう単純ではないからです。
とはいえ、ツイッターの世界では矛盾を包括した発信はなんの得もありません。
そうなると、矛盾すること、複雑なことに耐えることはなんの価値もないように思えてくる。
しかしこの本『ネガティブ・ケイパビリティ』は、
「いやいやそんなことないよ!」
と力強く励ましてくれます。
わたしたちの生きる社会では、かんたんに言い切れない複雑な問題がある。
むしろそれがほとんどかもしれません。
小気味の良い断定的で性急な答えが、その場しのぎの答えになってしまう場合も少なくない。
難しい問題ほど、安易な答えに飛びつこうとせず、あーでもないこーでもないとネガティブ・ケイパビリティを発揮するほうが、問題の核心に迫ることができる。
本書では、その例がいくつか紹介されています。
医療では精神医療や終末医療について。
芸術では紫式部やシェイクスピアについて多くの紙幅がさかれています。
また著者の帚木さん自らがネガティブ・ケイパビリティを発揮して、たどり着いたであろう記述もすごく興味深い。
例えば、「医療」と「宗教」とは正反対の相容れないものに思えますよね?
しかしその間に「プラセボ」というキーワードを置くと、ふたつの概念がすこしだけ混ざり合う。
その視点は宗教を非科学的だと断罪すれば、決してたどり着けませんし、その逆もしかり。
結果的に両者がうまく橋渡しをし、社会において役割を発揮すれば、広い意味での「ケア」がわたしたち患者に届くようになるでしょう。
今の世の中には、二元論がはびこっています。
けれどわたしはネガティブ・ケイパビリティを発揮して、新しい答えを探したいと思いました。
ネガティブ・ケイパビリティは性急に断罪しないことで、「寛容」と「良心」を下支えします。
「そいつはダメだ!」と言い切らず「そういう人もいるよね」といったん飲み込む。
その態度は社会において必要不可欠なものです。
わたしは他人に寛容な態度で接せられたい。
だからじぶんも寛容でいたい。
そうなると、ネガティブ・ケイパビリティはとても大切な考え方になります。
矛盾すること、立ち止まること、熟考すること。
それらの価値はこの現代で、まるで否定されているように感じます。
でも、そんなことないと勇気をもらえた本でした。
ぜひ読んでみてください!
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