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「まともな雑談」が読める、太田光著『違和感』書評レビュー

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太田光『違和感』の表紙

爆笑問題の太田光さんは文筆家としても精力的に活動されています。

 

今回は2018年に刊行された『違和感』をご紹介。

 

内容はいわゆるエッセイなのですが、こうゆう屈託のないシンプルに自分の言いたいことを言っていくエッセイは久しぶりに読んだような気がします…。

 

フリーテーマでさまざまな話題に展開されるこのエッセイは、まるで太田さんと友達になって喫茶店で雑談をしているかのような気分にさせられました。

 

そしてその雑談が、この現代の情報社会の中からするとずいぶんと”まとも”なものに感じられます。

 

まぁ『違和感』というタイトルの本を”まとも”と評すのはちょっと失礼な気がしますが(笑)(芸人さんだし)

 

素直な気持ちで、素直な言葉を受け取りたいなぁと感じている人に読んでみて欲しいです。

わたしの違和感。「有益」がはびこるインターネット

今は「有益」とか「メリット」が重要視される情報環境にあるな、と思います。

 

「ツイッターでフォロワーを増やすノウハウ」ってご存知ですか?

 

今やビジネス的に無視できない規模になったSNSでは、様々なノウハウが確立されています。

 

例えばツイッターなら「箇条書きにしてわかりやすく」「最初の一文でインパクトを」「改行を多くしてツイートの専有面積を増やす」…などなど如何にタイムラインの中でユーザーの目にとまるかに苦心します。

 

結果、いわゆる炎上マーケティング的な過激な内容か、逆に意識高い系に代表される有益なライフハック的内容がはびこるようになりました。

 

しかしひるがえって本当に有益なものって、そんなに押し付けられて得るものでしょうか?

 

「学校の授業は覚えていないけど、先生が授業中に脱線した話は覚えてる」なんてことありませんか?

 

少なくともわたしは自分の人生を振り返ると、努力しようとして努力したことより、いつのまにか継続してきたものが身になっている、なんてことがほとんどです。

 

かつてはインターネットの世界も雑談に溢れていました。

 

ただ今ではネットがビジネスになり、あふれるコンテンツの中でなんとか目にとまるために、どうしても端的な物言いが有効です。

 

そこがテレビや本と違い、ネットが過剰に「有益」に触れてしまうメカニズムなんですね。

 

そして徐々に徐々に本やテレビといった他の媒体もそんなネットのメカニズムに飲み込まれつつあると感じます。

 

本屋に行けば「本当に○○したかったら、○○しなさい」というまるでネットニュースのようなタイトルの本が並び、帯の宣伝文句は「Amazonランキングで1位!」「ツイッターで2万リツイート!」です。

 

テレビは言わずもがな「ネットで話題!」のニュースを取り上げます。

 

情報とはその出どころによって様々なバイアス(偏見)があるものです。

 

同じニュースをとってみても、媒体によって賛否が分かれ、書き方が違います。

 

大事なのはさまざまなバイアスを自分の中に担保すること。

 

今、「ネットのバイアス」がさまざまなメディアを侵食し、一辺倒な意見が増えているように感じています。

 

それはとても危険なことです。

 

「有益」とは目標までの最短距離のことでしょう。

 

そこに脱線はありません。

 

あの楽しかった脱線は、今やなかなか出会えなくなってきていると感じていました。

 

わたしはそんな多様性を失ったインターネットに違和感を持っています。

違和感があることの健全さ、マナー

そんな折、なんとなく読んでみた『違和感』はまともな雑談に溢れていて、なんだか嬉しくなりました。

 

まともといっても、そこの書かれいてる内容自体は極端で個人的なものが多いんですね。

 

しかし偏見に富んだそれを素直に表現すること、そのスタンスがまともなのです。

 

先ほどのネットで言うと、「違和感」とは表明すれば、叩かれるものかもしれません。

 

あるいはビジネス的側面から、人々の注目を集めるためにあえて利用するものです。(しかしその場合、その違和感はまともなものではなく、単に人を傷つけるだけのものになりがち)

 

ネットでは安心して個々人がもつ違和感を語り合うことは非常に難しく、逆に「誰かを傷つけてもかまうもんか!」と開き直った礼儀のない違和感が多いと感じています。

 

やはりテレビで不特定多数に対していつも表現している芸人さんだからでしょうか。

 

この本には違和感を表明しながらも、読者に対しての礼儀・マナーがちゃんとあるように思います。

 

太田さん自身の迷っている、悩んでいる。

 

そして自分の違和感は比較的にマイノリティであることも自覚している。

 

そのスタンスを文中でちゃんと表現することで、書かれている内容は偏りのある違和感でありながらも、安心してそれを受け取ることができました。

 

今のネットを中心とした言論空間は、

  • 多様な意見を育むことができない
  • 安心して自分の意見(違和感)を表明できない

であるとしているのが、わたしの違和感です。

 

そんな中、この太田光さんの本は、なんとも”まとも”で健全ですらあると思えたんですね。

 

違和感を違和感としてちゃんと持ち、それを伝える時は相手を論破することや有益さを提供することを目的としない。

 

そしてマナーをもって伝える。

 

そんな雑談はやっぱり楽しいですよね。

 

この本には太田さんが影響を受けた人物や作品が多数登場します。

 

それは「授業中の脱線」のようで、どれもこれも興味をそそられます。

 

きっとそんな中から、生涯にわたって影響を受ける運命の作品に出会ったりするものではないでししょうか?

 

もちろん、ここまで言ってきた「ネットに対する違和感」はわたしの個人的な意見に過ぎません。

 

だけどもし同じ違和感を持っている人がいるなら、この『違和感』という本を読むことで、楽しい読書体験が戻ってくるかもしれません。

 

ぜひ読んでみて下さい。

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今日のあとがき

9月20日

ようやく、今日で夏は終わりかな。

  

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