『20代で隠居』以来、大原扁理さんのファンです。
2月13日に発売された新刊を読みました!
「隠居生活10年目」ということで、長年の隠居生活の中で見出した不安との付き合い方について書かれています。
そもそも隠居生活とはどんなものかと言うと、大原流隠居は格安アパートに住み、消費を抑え、抑えられた分、労働を減らすという生活でした。
当然、収入は減るのですが、それでも自立して自由に生きることで、かえって幸福度が上がったと。
この本はそんな大原さんの隠居生活や人生哲学を「不安」というキーワードで紐解いていった本です。
その装丁からわかるように、今回は女性でも読みやすいよう配慮されていると思います。
今まで大原さんのことを知らなかった主婦層の人たちも手に取りやすい、読みやすい本です!
読んでも不安は消えない…でも
本書も大原さんがこれまで出版してきた本と主張はおおむね同じです。
自立と自律から、自由と健康を得ていく。
その考え方と実践してきた経験を語っています。
おそらくこの本を読んでも、あなたの不安は消えないでしょう。
っというのも、大原さんはコンビニで売っているサプリのような「かんたんな答え」を嫌っているように見えるからです。
自分の良いところ、悪いところ。
社会の良いところ、悪いところ。
それらをフェアに並べて、それでも自分らしい答えを出していく。
そんな思考と実践の足跡を見ることができるのがこの本です。
当然、それがあなたにとって不安解消の武器になり得るだろうし、なり得ないかもしれない。
だから読んだからと言って、必ずしも不安は消えません。
しかしポジティブに言えば、だからこそ安いビジネス本のようなその場しのぎでは気休めではないんだと思います。
だから読んで不安は消えなくても不安を消し始める第一歩にはなるでしょう。
この本を読んで、参考にし、あなた自身が試行錯誤することではじめて不安は軽減されていきます。
大原さんが魔法使いのように不安をけしてくれるわけではないのです。
卓越した文章力に脱帽
今回、とにかく思ったのは大原さんの文章力の凄さです。
ここまで軽妙に、冗談のような表現を交えながら、でも言っていることは実はちょっと難解という文章は、なかなか他では読めないのでは。
わたしの好きな言葉に、
難しいことをかんたんに、かんたんなことを深く
という言葉がありますが、大原さんの文章はまさにそれに該当するように思います。
また驚くべきはその刊行ペースです。
前著『今、台湾で隠居しています(250ページ)』が発売されたのが2020年12月15日。
そして今回の『不安は9割捨てました(231ページ)』が発売されたのが2021年2月20日でした。
わたしもいちおう文章で生計を立てている身。
そのわたしが思うに、これだけの質と量を書ける文筆家ってなかなかのもんですよ。
大原さんはエッセイストとして、ある一定のレベルに到達しているのではないでしょうか。
しかしそうなると「隠居」というキーワードがややこしく感じます。
文章の質、量、ともに隠居って肩書が似つかわしくない(笑)
ふつうに第一線のエッセイストです。
『不安は9割捨てました』から読んだ人は「文章の才能があるから、隠居できるんでしょ?普通の人はムリ」なんて感想を持つかもしれない…なんて勝手に心配してしまいます(笑)
『20代で隠居』から読めば、それは間違いだとわかるのですが…。
でもそのぐらい筆に勢いがある。
大原さん自身も「隠居」には執着していないそうです。
今回この本を読んで、もしかしたらそろそろ隠居は卒業なのかもしれないなと思いました。
わたしはむしろ隠居と銘打っていない、大原さんの本を読んでみていと思います。
もしかしたら「隠居」なしでは「出版物」としては難しいのかもしれません。
本を売るためには何かしらのキーワードが必要でしょう。
それでもわたしは隠居の肩書を取っ払った、むき出しの大原さんのエッセイ本を読んでみたい。
発売されたら買うので、ぜひ出版社の皆様よろしくお願いします(笑)
『隠居生活10年目 不安は9割捨てました』は読みやすさは抜群。
それでいてガッツリ食べ応えのある、稀有な本です。
ぜひ読んでみて下さい!
『20代で隠居』やその他もおすすめです↓
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