15年以上まえに出版されたこの本。
いや~、刺さりまくりました!
だって今、わたしが感じている違和感がそのまま話されているんですもん。
このブログではたびたび『遅いインターネット』という本を紹介してきました。
すでにタイトルからして共通のなにかを感じません?
『遅いインターネット』は2020年に発刊された、主にSNSに対して批判的な論考です。
SNSはスピーディで感情的な反応がカオスのごとく行きかう情報空間。
結果、そこに興じる人々はどんどん「考えなく」なってしまった。
そのアンチテーゼとして、次々にトレンドを消費するのではなく、長い目で見て読み応えのあるウェブメディアを運営していくのが『遅いインターネット』です。
『スローブログ宣言!』でも似たような違和感が表明されています。
ネット回線が今より高額で、しかもサイトを立ち上げてネットで発信するにはちょっと知識が必要だった時代。(2000年前後)
今よりもずっとずっとインターネットはスローでした。
そこにブログが登場し、だれでもかんたんに文章を発信できるようになります。
さらにブログにはトラックバックとかコメントの仕組みが付随しており、筆者と読者が気軽にコミュニケーションできるようになりました。
結果、安易な発信が生まれ、今日まで続く「炎上」という現象が生まれはじめます。
またこの頃アフィリエイト(Amazonアソシエイト)が始まったこともあり、いわゆる収益目的のまとめサイトができました。
それもまた安易な発信を生む原因になります。
『スローブログ宣言!』の主張は、そのスケール感に違いはあれど『遅いインターネット』とかなり近いですね。
「衝動的で安易な発信から距離を置き、マイペースにスローにブログ(ウェブ)を書こう」という根本のスタンスは同じに思えます。
わたしはSNSがまだ流行っていなかった2005年時点において、既に「インターネットのスピード」に対する懸念があったことに驚きを隠せませんでした。
時代は繰り返す(笑)
そう思えば、2005年よりもっとスピーディになった今のネット(SNS)に対して、ある種の気持ち悪さを感じるのは正常なことかもしれません。
しかし逆に希望を感じたのは、そんな騒がしい現代でも『スローブログ宣言!』がわたしの手元まで届いたことです。
今、「スロー」という概念が世界的に見直されています。
ファクトチェックを重視した「スロージャーナリズム」が欧米を中心に見直されていますし、SNSのように余計な情報を見ないですむ「ニュースレーター」のプラットフォーム企業が多額の資金調達をしたなんてニュースも聞こえてきます。
15年の時を経て「スロー」という概念が今やっと価値を帯びてきている。
きっと2005年当時、『スローブログ宣言!』の趣旨はあまり賛同されなかったでしょう。(っていうか理解されなかったでしょう)
しかし著者の鈴木芳樹さんに言いたいです。
あなたの書いたことは決して無駄ではなかったと。
正しかったことがたくさんあると。
…と、なぜこんなにエモくなっているかと言うと、著者の鈴木さんはこの本を書いた3年後に急性心筋梗塞で残念ながら亡くなられたと知ったから。
関連サイト:鈴木芳樹さん通夜 : 小心者の杖日記
享年38歳。
そしてわたしは今現在35歳で、鈴木さんが「スローブログ宣言!」を発刊した年齢といっしょ。
ちょっと運命的で数奇な偶然を前に、なんだかこの本が時を超えて届いた手紙のように思えて、必要以上にエモエモになってしまったのでした。
鈴木さんのブログは今もはてなブログに残っているようです。(たぶんはてなダイアリーから自動移転されたっぽい)
最後とそのひとつ前の内容にちょっと泣きそうになる…。
関連サイト:https://yskszk.hatenadiary.org/
ただこのわたしの一連の体験が「スローブログ」の醍醐味にも思えます。
インターネットは「今」を消費するだけのものではなく、誰でも自由に「過去」にアクセスできるのが大きな魅力。
過去の誰かの知恵や体験が、今の自分に役立ち、未来を作ります。
その「過去」がほとんど無料のようなかたちで、万人に開かれていることこそがインターネットのロマンであったような気がします。
『スローブログ宣言!』はたしかにわたしを勇気づけました。
この体験を未来(の人たち)もできるようにしたい。
そのための『スローブログ宣言!』だし、今日の『遅いインターネット』だろう思います。(そして、はてなブログはブログをずっと残してくれていて偉いぞ!)
ただ、わたしがこの本を見つけたのはAmazonでもGoogleでもなく、図書館(のサイト)だったんですよね…。
う~ん、やっぱり今のネットは過去をつなぐ力が弱くなっているのかも…。
だとすればそこは改善すべき点です。
まぁ、図書館のサイトも「ネット」だといえばそうかもしれませんが。
今はもう古本か図書館でしか読めなくなっていると思いますが、興味あるかたはぜひ読んでみて下さい。
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