子どもにスマホを使わせるべきか…。
悩んでいるなら、いち早くこの本を読むべきです。
スウェーデンの精神科医、アンディ・ハンセンの著書『スマホ脳』は、そのタイトルから想像させるとおり、現代のスマホ社会に警鐘を鳴らす本。
わたしはスマホ依存に関する本を何冊か読んできました。
『デジタル・ミニマリスト』『スマホを捨てたい子どもたち』『僕らはそれに抵抗できない』などなど…。
中でも今回読んだ『スマホ脳』はいちばん内容がわかりやすかったです。
関連書籍と重複する内容は多々あれど、エビデンス(根拠)と主張がシンプルに論じられており、とても腑に落ちやすい。
また時折「iPhoneの発案者であるスティーブ・ジョブスですら、我が子にはiPadを見せなかった」といったセンセーショナルなエピソードを混ぜ込むことで、つよくスマホの危険性を訴えかけることに成功しています。
人がスマホを見てしまうのはドーパミンが関係している。
ではドーパミンとはつまりどんな物質で、なぜ人間に必要なのか?
生物学的観点(つまり人類として)から説明しています。
例えば、ドーパミンは「○○かも」というシチュエーションに遭遇した時、いちばん放出される脳内物質だそう。
「1km先にリンゴがあるかも」
そういった時、その場所に向かわせるためにドーパミンが発せられます。
「確実にある」「確実にない」という場合はドーパミンは出ない。
確実にあるなら、お腹が空いた時に行けば良いし、ないなら行かなくても良いわけです。
基本的に食物が不足していた原始において、「○○かも」というシチュエーションは必ず確かめる必要がありました。
だから「○○かも」でドーパミンが出る。
また「新しい情報」に対してもドーパミンが出るそう。
1kmでリンゴをゲットしたら、次はまた新しいリンゴを探しに行く必要があります。
だから「誰か他にリンゴ知らない?」と新しい情報を求め始めます。
ひるがえって現代のスマホ社会に戻ると、スマホとはつまり
「新しい情報」が「あるかも」よ?
と、常にポケットから訴えかけてくる存在なわけです。
そいつを積極的に気にする(ドーパミンが出る)ように、わたしたちの脳は進化してきました。
だから、気になって気になってしょうがない。
結果的にスマホ以外の事柄に対して注意散漫になり、いろいろと弊害が出てくると。
これはスマホのデメリットのほんの一部で、本書ではもっと詳しく語られています。
とりわけ子どもたちの脳の成長にどんな影響を及ぼすのか。
第7章「バカになっていく子供たち」は特に危機感を持って読みました。
依存させる側としての責任
ところでわたしはブログでスマホ依存に関する本を紹介して、たぶんあなたはスマホでこの記事を読んでいるのではないでしょうか。
なんだかその風景はちょっと滑稽で矛盾しているように思えませんか?
「スマホがダメなら、ブログなんて書くなよ」と。
それはホントその通りですよね。
しかし今や、わたしだけでなく誰もがその矛盾に答えていかないといけません。
近年は大手マスメディアから、インターネットの世界へ急激に広告費が流れています。
その金額は既に逆転し、インターネットメディアの方が多くなりました。
つまりビジネスの主戦場がスマホの中に移ったということ。
誰しもが食べていかないといけないわけですから、全ての大人はスマホのなかでビジネスすることを避けて通れません。
わたしは今、34歳。
おそらくわたしたち世代がこの矛盾にどう答えていくかで、20年後の未来が決まっていくでしょう。
「消費者」としてスマホを手放すことは、実は難しくない。
しかしこと「生産者」になると難しい…。
自分は依存したくないけど、人を依存させるのはOK?
とりわけメディア従事者においては、その問いにどう答えていくべきでしょうか?
広い意味でメディアを手掛けている人たちも色んな道を模索しています。
SNSに迎合してバズを狙う人。
紙媒体に戦略的に撤退する人。
ネットの中で、あえてスローな発信を目指す人。
どれが正解かは今、言うことはできませんが、わたし自身はネットの中でスローな発信をしていきたいなと思っています。(実はこのブログにツイッターのシェアボタンがないのも、そんな意味を込めています)
個人的にこの『スマホ脳』はもっと売れて欲しい。
帯に「世界的ベストセラー!」と銘打ってありますが、書籍の世界でベストセラー(大ヒット)といっても、せいぜい100万部とか。
日本国民だけでも、1億人以上いますから、スマホに対する危機感はなかなかメインストリームになり得ないでしょう。
そこに一抹のさびしさを感じながらも、だからこそ気づいた人は積極的に矛盾して、問いを自分の中に持ち続けて欲しいなと思います。
これから依存するすべての子どもたちへ、これから依存させるすべての大人たちへ、この本を贈りたい。
その意味では、まさに「一家に一冊」おいていて欲しい本です。
ぜひ時間を作って読んでみて下さい!