わたしは2020年にツイッターアカウントを削除しました。
今思うと「あの時、やめておいてほんとうに良かった…」なんて思います。
わたしは今や、できるだけ多くの人がツイッターをやめたほうがいいと思っています。
以下からその理由をご説明します!
コミュニケーションツールではない
ツイッターをはじめとしたSNSは当初「コミュニケーションツール」だと言われてきました。
いわゆるマスメディアとは違い、ひとりひとりが双方向に情報を発信して、コミュニケーションをとるためのツールだと。
これはカタチは違えど、年賀状に近いものがありますよね。
しかもツイッターは年賀状と違って物理的な制限がないから、リアルタイムにちょっとした言葉を発信することもできます。
気軽に友人・知人の近況を知ることができる。
それはたしかに便利なものでした。
実際に”以前は”フォローしている人のツイートがリアルタムに表示されるタイムラインだったんです。
ところが今や、タイムラインに表示されるツイートはフォローしている人のツイートだけでなく、どこかでバズっているツイートや、広告が多くなってきた。
これはタイムラインがフォロー・フォロワー(人)ベースから、アルゴリズムベースに変わったから。
つまりツイッター側が、タイムラインに並ぶコンテンツを時間軸ではない一定の基準で制御して、ユーザーに最適化してるんです。
ちょっと想像してみてほしいのですが、もし
「年賀状を1枚受け取るのに、DM(広告)を3通受け取らねばならない」
と言われたらどうでしょうか?
「おいおい、ちょっと勘弁してくれよ」って思いますよね。
そんなの、コミュニケーションツールとしては、ほとんど破綻しています。
しかし今のツイッターはそれに近い。
なぜ、そんなことをするのか?
それはユーザーをより、ツイッターに執着させるためです。
タイムラインは情報のパチンコ
人間には「ランダム報酬」という本能があります。
ランダム報酬とは、不規則にアタリとハズレが繰り返されると、脳の「報酬系」が刺激され、快感が生まれるシステムのこと。
これは脳内のドーパミンが関係しており、ドーパミンは「もしかしたら、〇〇かも」という状態の時に発せられる脳内物質です。
「その〇〇を確かめに行け!」と命令しているのがドーパミンなんですね。
これは食料が少なかった原始の時代、「もしかしたら、食べ物があるかも」といった情報が入ったとき、必ず確かめる必要があったから発達した本能だそう。
(ちなみに恋愛の最初が楽しいのも「もしかしたら、付き合えるかも」という状態でドーパミンが出るかららしい)
つまりアタリとハズレがランダムに繰り返されるタイムラインをみると、その「もしかしたら…〇〇かも(もしかしたら、次アタリかも)」という状態がずっと繰り返されることになるんですね。
だからツイッターを確かめずにはいられない=なかなか止められないんです。
この仕組はそっくりそのままパチンコだと言って差し支えないでしょう。
縦にグルグル回るタイムラインは、比喩でもなんでも無くパチンコのそれ。
しかしパチンコより、ツイッターのほうがずっとタチが悪いかもしれません。
まずもってツイッターは見るのはスマホなので、物理的に距離を取るのがむずかしい。
さらにツイッターはまさにアルゴリズムによって、個々人の志向にあったアタリとハズレが、最適なタイミングで表示されようにタイムラインを調整しています。
アルゴリズムの精度を高めるため、ツイッターはユーザーの個人情報を大量に収集。
どのツイートに「いいね」「リツイート」したかはおろか、「文字入力」の内容や、なんのアクションもせずとも「このツイートに何秒とまったか?」など、思いもよらない情報を収集していると言います。
その大量の情報をビッグデータとして解析し、見事にランダム報酬が発生するタイムラインをつくっているわけですね。
ツイートは写真週刊誌
そうやってユーザーに執着してもらった先でツイッター社は「アクティブユーザー数」とか「利用時間数」といった数字をゲットします。
その数字を株主や広告主が見て、ツイッターという企業の価値が決まる。
時折、SNS企業が、
「ユーザーはSNS企業の顧客ではない、商品だ」
と批判されるのは、こういったビジネスモデルがあるからです。
ツイッターはまさにユーザーの数と情報を広告主に売って、広告でマネタイズする企業ですね。
さて、そのように「とにかくユーザーに執着してもらうのが大事」なビジネスモデルを考えた時、あなたがツイッター社の人なら、どのようなアルゴリズムを設定して、どのようなツイートをタイムラインに表示させますか?
より多くの人を、より強く惹きつけたい。
そのための内容(ツイート)とはなんでしょう?
それは残念ながら、今も昔もゴシップとワイドショー。
今や多くの若者はテレビをもってないと言います。
雑誌や本も新聞も、売れ行きは下降の一途。
テレビも見ない、週刊誌やスポーツ新聞も買わない。
なのになぜ、あなたは「芸能人の不倫」のニュースを知っているのか?
今やツイッターはテレビを見ない人にワイドショーを、週刊誌を買わない人にゴシップを読ませる機械になっているからです。
ここで「ゴシップなんか見ていない!」と反論する人も多いはず。
けど、ほんとうにそうでしょうか?
芸能人や有名人をチェックしていなくても、見ているのは友人のウワサ話やインフルエンサーの恋愛事情なのでは?
大なり小なり、それはゴシップでしかありません。
ゴシップとはつまり「人の人生をみて、あーだこーだ勝手に批評する」こと。
そんなガス抜きも、たまになら良いでしょう。
しかしツイッターの恐ろしいところは、週刊誌やテレビと違って、まいにち無限に情報が更新されていくところです。
芸能人、有名人に飽きたら、地域の人気者やインフルエンサーへ。
その矛先を変えるだけで、湯水の如くゴシップ&ワイドショーが湧き出てきます。
逆にインフルエンサーはその環境を利用して、セルフワイドショーと言えるようなビジネスを展開。
聞いてもないのに、【ご報告】!
「付き合いました」「結婚しました」「不倫しました」「離婚しました」…。
これはじぶんでじぶんの写真週刊誌を発行するのと、まったくいっしょでしょう。
内容はなんであれ、フォロワーと注目さえ集めてしまえば、あとはオンラインサロンやクラウドファンディング、情報商材でお金を稼ぐことができてしまいます。
なんならあなたの友人・知人(一般人)も、積極的にじぶんゴシップを発信している可能性を指摘しなければいけません。
ここでもまた「フィードバック報酬」という人間の本能が関係しています。
これは単純に、じぶんがやったことにリアクションがあると嬉しいという本能。
誰しも多くの「いいね」がついたら、嬉しいですよね。
しかしここでもまたアルゴリズムによるタイムラインの制御が効いて、ゴシップ・ワイドショー的な人を惹きつけるツイートに、より「いいね」が集まりやすいようになっています。
他愛のない「ハラへったー」なんてツイートの出現頻度は低く、刺激的で「いいね」をたくさん稼ぎそうなツイートがタイムラインに多く出るようにアルゴリズムが調整しているんです。
そんな中でも当然、ユーザーはツイートする限り「いいね!」がたくさんついてほしい。
すると知らず知らず、じぶんのツイートをゴシップ・ワイドショーに寄せてしまうんですね。
つまりツイッターはフィードバック報酬に訴えかけることで、人から自然とワイドショーを引き出すことに成功しているわけです。
このようにワイドショーが自家発電されるアテンション・エコノミー(注目経済)が、ツイッターを中心に確立されています。
つまりツイッターとは、見る側のランダム報酬×発信する側のフィードバック報酬の、
「パチンコ型 写真週刊誌」。
パチンコのメカニズムで、延々とゴシップがスクロールされる。
その世界に身を投じていたら、時間がいくらあってもほんとうに足りませんよね。
大げさでなく、SNSには人生が足りないほどたくさんの情報がまいにちアップロードされています。
それらをじぶんの意思ではなく、人間の「本能」を刺激された結果、見続けているとしたら…。
これはちょっと恐ろしいことだと思います。
ハックできない(使いこなせない)
このようにツイッターを批判すると、
「ゴシップとかワイドショーとか無益なものを見ないで、有益な情報だけ見ればいい」
といった意見もあるでしょう。
しかしそれは「パチンコで生計立てるわ!」と言っているのと、ほとんどいっしょです。
ツイッターの場合、たしかにいろんな「ハック」「ノウハウ」を利用すれば、いくらか使いこなせるかもしれません。
でも基本的にはムリです。
なぜなら、その勝負のルールを決めているのは胴元(ツイッター社)だから。
先ほど言ったように、ランダム報酬を促すためには”あえて”ハズレを入れる必要がありました。
ツイッター社がユーザーに対して”逆ハック”を行使する以上、わたしたちが絶対にハズレを引かずに利用することは不可能になる。
そして今やツイッターには全世界何億人ものビッグデータが集まっています。
そのビッグデータから、あなたをハメる戦略が導き出され、実際に施行している。
パチプロが永続的に黒字になってしまったら、パチンコ屋は潰れちゃいますよね?
だからパチンコ屋が黒字、パチプロが赤字になるように統計的に管理されているわけです。
ツイッターも同じ。
ユーザーみんなが上手にツイッターを使って、効率的に情報収集を行ったら「数字」は下がってしまいます。
それはツイッターの企業価値の凋落を意味する。
だからツイッター側からすると、ユーザーが効率的に、生産的に情報収集”できない”アルゴリズムに設定するしかありません。
疲れる
脳にはじぶん(あなた)が認識できる「意識」と、勝手に動いている「無意識」の領域があると言います。
実は集中力を司っているのは「無意識」の方らしいんですね。
その作業をやりはじめると「無意識」が作動して、集中力が勝手につくられます。
でもSNSは「無意識」エネルギーを激しく消耗する。
ランダム報酬のくだりで「アタリ」と「ハズレ」を判断すると言いましたが、ツイッターを見ている時に意識して「これアタリだ!」「これハズレじゃん…」なんて考えないですよね。
その選別は「無意識」が水面下でやってくれています。
だからただタイムラインをスクロールするだけで「無意識」の脳が疲れていく。
そしてほんとうに大事なことに集中したいとき、もう疲れていて集中できなくなる。
これもまた、大きな損失だと思います。
いつまで週刊誌の立ち読みを続けますか?
コンビニで写真週刊誌を立ち読みしたことはありますか?
おそらく、ほとんどの人がないと思います。
それなのにツイッターは嬉々として見続けるって、なんだか変じゃないでしょうか?
ヘタすると雑誌や本、テレビやラジオといった旧媒体を格下に見て、ツイッターを使いこなす(こなしているつもり)のじぶんの方が「クール」だと思ってないでしょうか?
それは大きな間違いであると、ここまで読んで理解してもらえたと思います。
例えばテレビなら「見たいものだけを見る」ようハックするのはかんたんですよね。
時間帯によって番組が決まっているから、ニュースを見たいなら7時か9時のNHKを見ればOK。
バラエティは民法のゴールデンタイムに。
ワイドショーはお昼。
子どもに見せるのはeテレ。
ハードディスクに録画すれば、ほとんどのCMを飛ばすこともできます。
実は旧媒体のほうがユーザー側のハックが容易で、かえって効率的。
少なくとも今流行の「ウェルビーイング」を考えれば、旧媒体のほうがよっぽど良いでしょう。
雑誌なんてせいぜい週1ですから、むしろ必要十分量でメリハリがついて良いかもしれません。
とにもかくにも、ワイドショー(=ツイッター)に過度な時間を費やすことはおすすめしません。
ワイドショーはけっきょく、他人の時間であって、じぶんの時間ではないからです。
振り返った時「他人のことばかり気にする人生だった」なんてハタと気づいたら…。
それはとっても悲しいことでですよね。
ツイッターをやめる方法
先ほどいったとおり、下手にハックしようとしてもムリ。
例えば「リストだけ見よう」と思っても、トレンドが目に入ってしまったり、他人のツイート一覧に移動しても、広告が目に入ってしまったり。
その瞬間、くだんの「ランダム報酬」がピリリと発動して、また執着がはじまる。
UI・UX、アルゴリズム…あらゆる方向からあらゆる技術を駆使するツイッターから逃げ切るのは、アカウントを削除しない限り不可能です。
なので、ツイッターをやめるには基本的にアカウントを削除するのが合理的。
お酒をやめたい人が、禁酒じゃなくて断酒するのといっしょですね。
でもいざやめようとすると、めちゃくちゃ苦しいと思います。
何を隠そう、わたしも「そろそろやめようかな…」と思ってから、実際にアカウントを削除するまで、実に1年以上かかりました。
そのぐらいツイッターが醸成する執着心は強いのだと思います。
しかしやめてみると、これがなかなか快感。
失った集中力がグッと復活してきます。
けっきょく、どれだけ他人を気にしても、じぶんがこの社会の中でできることは今、目の前にある仕事だけ。
だったらそれにしっかり集中して愛をもって取り組む方が、ツイッターで見せかけの正義を叫ぶよりも、欲深いゴシップをさらけ出すよりも、世の中を良い方向に変えていけるのではないでしょうか?
それにツイッターで得た人間関係も、それがほんとうに必要なら、また繋がることができます。
もしツイッターをやめたぐらいで途切れる友人関係だったら、あなたはその人にとって「友人」ではなく、ただの「アカウント」だったのでしょう。
そんな関係は、最初からいらなかったかもしれません。
そのうっすい、でも確実に存在はしていた人間関係を断ち切ることで、ほんとうに大切な人に出会う時間が生まれるのかもしれない。
そう考えれば、アカウント削除もちょっとだけ前向きになれる気がしませんか?
ツイッターをやめることは、思った以上に人生に影響を与えると思います。
繰り返すとおり、わたしとしてはぜひ、やめてみることをおすすめします。