野中モモさんの『野中モモの「ZINE」小さなわたしのメディアを作る』がとてもおもしろかったでご紹介します。
そもそもZINEとは何かというと、個人が営利を目的とせず発行する出版物のこと。
ウェブのブログやSNSも個人が営利目的としないものはたくさんありますが、ZINEの場合は特に紙媒体であることが多いようですね。
ZINEと聞いて、「誰でもネットで発信できる時代に今さら…?」と思う人は多いと思います。
ごたぶん洩れず、わたし自身もずっとネットで発信(ブログ)してきた身なので、ZINEとは縁遠い人でした。
ところがウェブ発信をずっと続けていく中で、違和感を覚えることが多くなってきたんですね。
この本を読むことでその違和感がだいぶクリアになってきたように思います。
文章を書く=発信 になってしまった現代
「ウェブ発信力を身に着けよう!」
「SNSで人生を変える!」
本屋やネットで、そんな宣伝文句を見たことはないでしょうか?
実際、インターネットはすごい力を持っています。
趣味の料理がインスタで話題になって本を出版!
たまたま書いたブログがきっかけで転職!
そんなシンデレラストーリーは列挙にいとまがありません。
ところがそんな状況が当たり前になると、今度は成功を見越してネットで発信をすることが半ば常識のようになってきました。
多くの人に届け、影響を与えることを唯一の目標として文章やイラスト、写真など自分の作品を発信する人が増えてきました。
またネットはお金とカンタンに紐づけることができます。
誰でも簡単にブログに広告を貼ることができますし、SNSでフォロワーが増えれば企業から広告投稿を頼まれることもあるでしょう。
noteというプラットフォームを使えば自分の作品に値段をつけて売ることだって今すぐにできてしまいます。
わたし自身、ネットでの発信とウェブ広告で生計を立てている身です。
ところがそんな生活を送る中で忘れてしまっていたことがあるような気がするんですよ。
発信によって忘れた「表現の楽しさ」を思い出した
影響力やお金の獲得を目的とした「発信」。
ZINEはそんな発信とは一線を画した行為のようです。
『野中モモの「ZINE」小さなわたしのメディアを作る』では野中さんのZINE史と実際にZINEを作っている人たちへのインタビューが主な内容になっています。
その中で紹介されているZINEとは実に様々。
個人の日記のような、壁新聞のようなZINEもあれば、フェミニズムをテーマにしたZINEもあり。
フリーペーパーのようなペライチ枚もあれば、折り紙のようなオリジナルの装丁もあり。
自分の想いを本当に自由に表現されています。
そこから見えてきたのは、いわゆる「発信」ではない「表現」の楽しさでした。
結果的にZINEが影響力やお金に繋がることもあるでしょう。
しかしZINEはその前段階に確かに存在していた「表現の楽しさ」を尊重したムーブメントに思えます。
そもそも文章を綴る、絵をかく、それ自体が目的となり得るのです。
一心不乱に何かを作っていると集中して、ストレス解消を感じたことはありませんか?
作ること、表現することのセラピー効果はきっとあると思います。
日記のように、表現したことを一人で留めるのではなく、手の届く範囲のあの人に届けることでそれはコミュニケーションにもなります。
「届ける」といった一点においては、ネットの方が優秀でしょう。
しかし逆にネットだと不特定多数に届いていしまう、というのがリスクとして浮かび上がってきます。(いわゆる炎上)
手の届く範囲の人たちにそっと届けられるZINEという媒体なら安心して表現できる。
そんなメリットもZINEにはあるんですね。
この本を読んで、わたしの中に、
- 発信=影響力、お金を目的とした概念
- 表現=作る楽しさを目的とした概念
という2軸が浮かび上がってきました。
思えば自分がブログを始めた時。
表現の楽しさに夢中になっていました。
発信のメリットがたしかにモチベーションになってはいたのですが、誰かに届けたい思いや広めたい知識があることが、いちばん根底にあった気がします。
だから1日に何記事も書いたり、ブログそのものの勉強もしました。
その努力が実って今ではそれで生計を立てることができているわけですが、一方であの頃感じた「表現の楽しさ」はとんと忘れていたように思います。
ZINEはネット的発信から隔離されていることで、表現の楽しさが脈々と息づいている文化に見えます。
今は仕事になってしまったブログも楽しい方が絶対良いに決まっている。
そしてその楽しさは「表現」のことだったんだ…。
この本を読んでそのことに気づけたのは、わたしにとって大きな収穫でした。
表現の楽しさがZINEにはある
ブログも十分に表現の楽しさを味わえる媒体ではあるのですが、ZINEは紙媒体であるがゆえにさらに自由に表現できるもののようです。
手紙にするか否かで大きく変わるフォント。 写真やイラスト、見出しの配置も自由自在。
さらには紙だって正方形じゃなくて良いし、折っても、切ってもOK。
自分の「作りたい欲求」を受け止める度量は、PCやスマホのそれよりもやはり紙の方が大きいと思います。
『野中モモの「ZINE」小さなわたしのメディアを作る』の本の装丁も実はZINEの体験版のようになっているのかな?と感じました。
手書きフォントが取り入れられていたり↓
最近見ない二段組!↓
スマホじゃ絶対不可能な装丁ですよね。
この本から見えてくるイキイキとした表現。
発信者として生きているわたしも改めて表現の楽しさや大切さを知ることとなりました。
野中モモさんが出演したラジオやZINEのウェブショップも一緒にどうぞ
ぜひこの本に合わせて野中モモさんの運営するウェブショップ「lilmag」もチェックしてみて下さい。
野中さんが選んだZINEを購入できるネットショップです!
また野中モモさんはライムスター宇多丸さんがMCを務めるラジオ「アフター6ジャンクション」に出演しています。
Spotifyやラジコなどで今も聴けると思うので、ぜひ聞いてみて下さい。
本を購入して配送を待つ間に聞くとテンションが上がってより本が楽しみになるのでおすすめです!(笑)
購入はこちら↓
以上、『野中モモの「ZINE」小さなわたしのメディアを作る』をご紹介しました。
お役立てたらうれしいです。
その他のおすすめ本はこちら↓
ブログメディア運営などに興味がある人はぜひ。
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