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孤独の大切さを説く、吉本隆明著『ひきこもれ』書評レビュー

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吉本隆明「ひきこもれ」表紙

近代を代表する思想家として知られる吉本隆明さんの『ひきこもれ』を読みました。

 

思想家…と言われると、難しい本だと想像しちゃいますが、この本はとっても読みやすいエッセイです。

 

2002年出版とだいぶ昔の本になってしまいましたが、書かれている内容はとても普遍的に思えました。(2020年に新装版が販売されました)

ひきこもりの価値を訴えたエッセイ

そもそも吉本さん自身がそうとうの引きこもり体質だそうです。

 

幼少の頃よりひとりが好きだった吉本さんは、実は孤独で引きこもったからこそ良かった部分、肯定できる人生があったという体験談が書かれています。

 

なぜ引きこもりが悪いことではないのでしょうか?

 

その理由は本書冒頭の一言に集約されていると思います。

 

いきなりハッとさせられる第一章、最初の一文がコレです。

時間をこま切れにされたら、人は何ものにもなることができない

吉本さんは優れた技能をもった人は必ず引きこもって自分と向き合ったり、技術を磨いたりする時間があったはずだと説きます。

 

これは直感的に理解できる気がしますよね。

 

イチローが子どもころ、友達とバラエティ番組を見ていたなんてエピソード聞いたことがありません(笑)

 

毎日毎日、父親を練習相手にノックを受けたり、バットを振っていたと言います。

 

それはある種の孤独の時間だったように思います。

 

吉本さんの言う「ひきこもりは価値がある」という前提で、自分の生活をふりかえると、少し恐ろしい気持ちになりました。

 

今、わたしたちの手元にはスマホがあります。

 

スマホはいつでもどこでも使えるため、アプリの売り文句に「スキマ時間を活用しよう!」なんて言葉がよく使われますよね?

 

しかしその実、こま切れの時間を埋めているのではなく、それを使うから逆に時間がこま切れになってしまっている側面は否めないと思います。

 

やるべきことがあるのについYouTubeを見てしまう…SNSを見てしまう…。

 

そんな経験は誰しもあるでしょう。

 

その意味で実はわたしたち現代人は本当の孤独を得にくい環境にあるのかもしれません。

 

引きこもりの価値、孤独の価値。

 

それを享受できない環境にわたしたちがいるとしたら…。

 

それは恐ろしいことに思えます。

 

孤独は自分で意思を持って守らないといけない時代。

 

だとすれば逆に孤独の価値を強く認識させる処方箋が必要でしょう。

 

そして本書がまさにその処方箋として期待できる本になっています。

 

孤独過ぎないためには?

一方でじゃあ、いつでも一人でいて社会と断絶するのが正解なのか?と言われればそうではないですよね。

 

本書の中でも孤独と社会の折り合いのつけ方についていくつか言及がなされています。

 

中でもわたしが共感したのは、

ぼくが見つけた孤独の処方箋は「銭湯」と「神社のお祭り」

という部分。

 

銭湯もお祭りも人がいてにぎやかです。

 

ところがそこに1人で居座り、誰とも話さなくても成立する空間ですよね。

 

吉本さんも人並みに孤独感に苛まれたときは、銭湯やお祭りに足を運んで、大勢の中にいる孤独を享受していたそうです。

 

わたし自身、自分は引きこもり体質だと実感しているのですが、すごく共感したのはわたしも実際に銭湯が好きだからです(笑)

 

説明が難しいのですが、何かコミュニケーションするわけでもないのに、その集団の中に埋没すると不思議な安堵感があります。

 

銭湯だけでなくカフェや喫茶店もそうでしょうか。

 

またわたしにとってお祭りに近いのはライブハウスでした。

 

ライブハウスは年中お祭りのようなものでして、銭湯やお祭りよりさらに孤独を癒す効果があるように思います。

 

っというのも、ライブハウスは音楽を通じて一体感を得られるからです。 メロディとリズムで演者もお客さんも繋がっていく。

 

直接言葉をかけるわけではないのに、他の次元でたしかに一体となっているのです。

 

その行為には確実に孤独を癒す効果があったと思います。

 

わたしなんかステージに立つ側(主催者側)だったので、自発的に孤独を癒す空間を企画していたと言えます。

 

そう思うと、実はめちゃくちゃ寂しがり屋な気がして恥ずかしいですね(笑)

10代、20代にもおすすめの本

本書は戦争やテロなど重い話題も登場します。

 

でもだからこそ、若い人にも読んで欲しいなぁと思います。

 

2002年の頃書かれたこの本は今20代の人が10代前半だったころの話。

 

その頃の大人たちがその時どうゆうふるまいをしてきたか少しわかると思います。

 

戦争の話となると、吉本さんが言っていることは学校の教科書で学んだこととはちょっと角度が違うと感じると思います。

 

それだけ人間というのものは、戦争というのは複雑なんだということが見えてくるのではないでしょうか。

 

複雑系を知り、「自分はまだ何も知らないんだ」という実感を得ることは、真の学びを後押ししてくれると思います。

 

一方で、テーマは重くとも、割と短文エッセイの集約なので、比較的に読みやすい本だとも言えます。

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文字レイアウトも圧迫感がなく読みやすい

吉本隆明に興味があった、という人の最初の一冊としてもおすすめかもしれません。

 

ちなみに2020年9月に人気絵本作家ヨシタケシンスケさんのイラストが入った新装版が刊行されたようです。

 

またこの本を読んで吉本隆明さんに興味を持ったら、ほぼ日が公開している「吉本隆明の183講演」もチェックしてみて下さい。

 

その名の通り、吉本隆明さんの講演を音声で聴くことができます。 一部テキストにもなっていますよ。

 

以上、吉本隆明著「ひきこもれ」の紹介でした。

 

参考になったらうれしいです。 

その他のおすすめ本はこちら↓

 

『ひきこもれ』とテイストの近い本が並んでいるので、きっと気に入ると思います。

 

ぜひチェックしてみて下さい。

 

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